はじめに
第55回では、日本の最新の食品成分表「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」の正誤表について紹介しました。正誤表は文部科学省のウェブサイトで公開されており、世界中から最新データにアクセスすることができます。
ただし、こうした情報が、必要とするすべての人に充分届いているかは不明です。一方で、正誤表が公表されれば、それを受け入れ、新しい食品成分データとして利用するユーザーが多いと考えられます。
今回は、「日本食品標準成分表」の初版から「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」までをたどり、正誤表の扱いがどのように変わってきたのかを概観します。
1.日本食品標準成分表(1950年公表)、改訂日本食品標準成分表(1954年公表)、三訂日本食品標準成分表(1963年公表)
初版、改訂版、三訂はいずれも、冊子のみで公表されています。
このころは、正誤表が独立して公表されることはまずなく、増刷の際に訂正が反映される形での公表であったと考えられます。
手書きで作業していた時代で、消しゴムのかすが数字の間に入り、そのままコピーされて小数点として扱われ公表されてしまった、という例もあったといいます。もちろん、その後修正されています。
2.四訂日本食品標準成分表(1982年公表)
「四訂日本食品標準成分表」は、冊子のみでの公表です。
1982年の初版(表紙:緑の四角が輪になっている)に加え、1995年に二版(表紙:初版と同じデザインで、緑を青に変更している)が刊行されました。初版は、一刷1982年、二刷1983年、三刷1985年、四刷1987年、五刷1988年、六刷1993年と増刷されており、二版は1995年に刊行されています。
これらの修正は、増刷や改訂の際に、明示的に示されるのではなく、静かに反映されていたと考えられます。
この成分表は「五訂日本食品標準成分表」が公表されるまでの18年間、最新の成分表として使用されていました。そのため、増刷や二版の刊行が行われていたものと考えられます。「四訂日本食品標準成分表」が使われていた当時は、食品成分表の所管であった科学技術庁版を利用するユーザーが多かったので、増刷や改訂に伴う静かな変更でも周知できたのかもしれません。
また、これらの正誤をまとめたものが、1997年に大蔵省印刷局から発行された『五訂日本食品標準成分表―新規食品編―』の巻末に、「四訂日本食品標準成分表 正誤表」として収載されています。この正誤表には、「四訂日本食品標準成分表(本編)」のほか、次のフォローアップ成分表が含まれています。
・改訂日本食品アミノ酸成分表(フォローアップⅠ)
・日本食品脂溶性成分表(フォローアップⅡ)
・日本食品無機質成分表(フォローアップⅢ)
・日本食品食物繊維成分表(フォローアップⅣ)
・日本食品ビタミンD成分表(フォローアップⅤ)
・日本食品ビタミンK・B6・B12成分表(フォローアップⅥ)
正誤表には備考欄が設けられており、対応する版や刷が示されています。
これらのフォローアップ成分表は、「四訂日本食品標準成分表」を補完し、五訂成分表の充実につなげるために策定されたものです。図書館等でぜひご覧ください。当時の策定への熱意が感じられます(紙質が簡素であることにも驚きます)。
3.五訂日本食品標準成分表(2000年公表)
「五訂日本食品標準成分表」も、冊子のみでの公表です。
一方で、正誤表は文部科学省のウェブサイトで公開されていました。
したがって、「食品成分表」の正誤の反映については、文部科学省版の「食品成分表」を購入した場合には、ユーザーが確認し、必要に応じて修正する必要がありました。
4.五訂増補日本食品標準成分表(2005年公表)
「五訂増補日本食品標準成分表」は、文部科学省のウェブサイトに掲載されました。現在は国立国会図書館ウェブサイトに移されていますが、正誤表については、文部科学省のウェブページの最後に今も掲載されています(2026年5月25日現在)。

そのため、文部科学省版の食品成分表を利用する場合には、「五訂日本食品標準成分表」と同様に、利用者自身が正誤表を確認し、必要に応じて修正する必要がありました。
5.日本食品標準成分表2010(2010年公表)
「日本食品標準成分表2010」も、文部科学省のウェブサイトで見ることができます。

このページの最後には、次のような記載があります。
「政府刊行物/官報/官報公告『日本食品標準成分表2010』は、全国官報販売協同組合より出版されています。全国の政府刊行物サービス・センター、官報販売所又はお近くの書店等でもお取り寄せ出来ます。」
また、この食品成分表は、Excelファイルではなく、PDFファイルで公開されています。そのため、食品成分表の編集を行う出版社にとっては、大変な作業であったと推察されます。
さらに、この時点で明確な「正誤表」の記載は一切ありません。したがって、訂正は全国官報販売協同組合による印刷時に対応されていたと推察されます。
6.日本食品標準成分表2015年版(七訂)(2015年公表)
「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」は文部科学省のウェブサイトで政府刊行物の発売と同時期に公表されました。本表はエクセル版が公表されました。
「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」では、2015年12月から2017年12月までに計13回の正誤表が公表されました。

その後、14回目に最新一括版が出ています。
一括版(PDF)
文部科学省のウェブサイトの「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」では、最初に「書籍版をご利用の方は必ず以下の正誤表をご確認下さい。」の注意書きと「正誤表」が収載されています。食品成分表の第1章より前にです。

「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」における正誤表の公表回数の多さや、このようなウェブサイトでの公表方法(文言など)に加え、「食品成分表」を編集している出版社が正誤表を反映した版を継続的に毎年刊行していることから、最新内容を反映した編集版の食品成分表を利用する利便性が認識されるようになりました。
ちなみに、文部科学省のサイトでは、政府刊行物の書籍の表紙も掲載しています。

このページの最後には、「書籍の注文・購入に関する問合せ先:全国官報販売協同組合 電話:×××」の記載もあります。
食品成分表ユーザーの多くは、この成分表までは、文部科学省が販売にかかわっているこれらの書籍を購入し利用していたと推察されます。
出版社により編集された食品成分表を利用していないユーザーにとっては、正誤については、サイトでの注意書きと「正誤表」が、修正内容を把握するための重要な情報でした。
一方で、正誤表の公表回数が多かったことから、編集版の食品成分表を併用して業務にあたる方が増えたように思います。
7.日本食品標準成分表2020年版(八訂)(2020年公表)
日本食品標準成分表2020年版(八訂)では、2021年2月3日および12月27日に正誤表が公表されました。いずれも文部科学省のウェブサイトに掲載され、統合版も公開されています。
現在では、表そのものの公表も、正誤表もウェブサイト上で公開され、世界中から最新データにアクセスすることができます。
正誤表が公表されれば、それを受け入れ、新しい食品成分データとして利用するユーザーが多いと考えられます。
また、食品成分表を編集し公表している出版社も、毎年年度版として食品成分表を刊行しているところが多いため、正誤表を反映した最新版の食品成分表が入手しやすい状況になっています。実際に毎年、食品成分表を購入していると、各出版社がユーザーの利便性を考えてさまざまに工夫していることがわかります(使い勝手は毎年進化しています)。
まとめ
「日本食品標準成分表」の「正誤表」の歴史をふり返りました。
食品成分表は、それぞれの時点で丁寧に策定されていますが、人が作成するものである以上、誤りを完全に防ぐことはできません。そのため、「正誤表」としての修正が積み重ねられてきました。
冊子のみで公表されていた時代には、訂正は増刷や改訂の際に反映される形が中心でした。その後、文部科学省のウェブサイトで正誤表が公開されるようになり、七訂以降は、正誤表の公表や一括版の提示など、利用者が修正内容を確認しやすい形へと変わってきました。
ユーザーは、正誤表が公表された際にはその内容を適切に反映し、正しい数値の「食品成分表」を利用することが求められます。
また、編集された「食品成分表」や、正誤表が反映された最新の栄養計算ソフトを活用することも重要です。食品成分表を編集し公表している出版社では、毎年年度版として食品成分表を刊行しているところも多く、正誤表を反映した最新版の食品成分表が入手しやすい状況になっています。
ぜひ、忘れずに毎年「食品成分表」を購入することをおすすめします。
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