食品成分表の「ごはん」を理解する(適切な栄養計算①)【成分表連載60】

栄養 食品成分表
渡邊智子 わたなべともこ

学校法人食糧学院 東京栄養食糧専門学校 校長


東京栄養食糧専門学校校長。医学博士。千葉県立衛生短期大学、千葉県立保健医療大学、淑徳大学を経て現職。千葉県立保健医療大学名誉教授、千葉県学校保健学会理事長、産業栄養指導者会会長。文部科学省による日本食品標準成分表の策定に食品成分委員会委員等として30年にわたり携わり、成分表活用の研究・提言を行なう。千葉県食育推進県民協議会委員として千葉県の食育ツール(グー・パー食生活ガイドブック等)の開発・普及も行なっている。


雨の多い日が続いていますが、季節はそろそろ新米の頃。炊きたてのごはんがおいしい季節です。

さて、食品成分表を使って栄養計算を行うさい、食品成分表に収載されている「めし」などの調理済み食品をどのように活用すればよいか悩まれるかたも多いようです。そこで、本連載で数回に分けて解説します。今回は、ごはんの原料である米と水について整理し、次回は食品成分表の「めし」の成分値を用いた栄養計算上の留意点を解説します。

1. 「ごはん」って?

日本人の主食の代表は、「ごはん」です。「御飯」や「ご飯」と記載されることもあります。「ご飯」は丁寧の接頭語「御(ご)」と「飯(はん=炊いた 米・ 食事)」を組み合わせた丁寧語です。

私たちが「ごはん」というとき、炊飯した米を指す場合と、食事全体を指す場合があります(図1)。本稿では、炊飯した米としての「ごはん」を扱います。

2. ごはんの基本的な材料

ごはんの材料は米と水です。おいしいごはんには、おいしい米と水が欠かせません。故郷で食べていた米を取り寄せて炊いても同じ味にならないことがありますが、その理由の一つは水の違いかもしれません。 

3. 米の種類と特徴を知る

米は、種類や搗精(とうせい)割合によって区分されます。また、稲の栽培方法により、水田で栽培する水稲米と、畑で栽培する陸稲米に分けられます。 搗精とは、玄米の表面にある「ぬか層」や「胚芽」を取り除いて米を白くする作業のことです。搗精の程度によって、「玄米」「半つき米」「七分つき米」「精白米」に分けられます。なお、「胚芽米」は、胚芽を残して精白米にした米です。

3-1. 日本食品成分表の「めし」の材料としての米

最新の食品成分表である「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」(以下、「八訂増補2023」)を見ると、めしの原料である米は、田んぼで栽培する水稲米10食品と、畑で栽培する陸稲米4食品が収載されています。

備考欄には、歩留まりが記載されています。

搗精度は、玄米からぬか層や胚芽をどれだけ取り除いたかを示していますが、歩留り(精白歩留まり)は、玄米を精白米にしたあとに残る米の重量割合です(1式)。

図2に玄米の構造と精白歩留まり別の米の図を示しました。また、表1に八訂増補2023に収載されている米と、その備考欄を記載しました。

備考欄に示されている、玄米の「(100 g:120 mL、100 mL:83 g))は、試料米100gの重さは計量カップ120mL、計量カップ100mLは83gであったことを示しています。

この値は栄養計算のさいにおおよその目安として利用できます。

3-2. うるち米ともち米

表1の備考欄に記載されているうるち米は、日本で最も一般的に食べられている米です。一方、もち米は、おこわやもちなどで食べる米です。

八訂増補2023の収載値を見ると、うるち米はもち米に比べ、エネルギー産生栄養素ではたんぱく質が5%少なく、利用炭水化物が7%多く、無機質では鉄が75%多く、マグネシウムが43%少ない値となっています。ビタミンでは、α-トコフェロール、ビタミンB1、ナイアシンに比較的大きな相違がみられますが、これらの栄養素はいずれも含有量自体が少なめです。

なお、もち米は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)[以下、成分表2015(七訂)]で初めて収載された食品です。それまでの食品成分表では、うるち米ともち米の成分値にはほとんど差がないとして一括して収載され、備考欄に「うるち、もちを含む」と記載されていました。このことからも、米も、食品成分表の改訂に伴い、収載食品や収載方法が変化してきた食品の一つであることがわかります。

一方で、うるち米ともち米の違いは、栄養成分値(表2)よりも粘りや食感に現われます。これは両者のでんぷん組成が異なるためです(表3)。うるち米はアミロースとアミロペクチンを含みますが、もち米はほぼアミロペクチンで構成されています。そのため、もち米は強い粘りを示します。せんべいやあられなどを食べるさいに、原料米の違いを意識してみると、うるち米ともち米の食感の違いを実感できるかもしれません。

3-3. インディカ米と発芽玄米 

「インディカ米」および「発芽玄米」は、もち米と同様に、成分表2015(七訂)で新たに収載された食品です。

インディカ米は、中国南部、インド、東南アジアなどで多く栽培されている細長い形状の米です。うるち米に比べてアミロース含量が多いので糊化温度が高く、炊飯後は硬めで粘りの少ない米飯(めし)になります。

発芽玄米は、玄米を水または温湯に浸漬してわずかに発芽させた後、加熱殺菌した米です。発芽過程で米粒が軟化するとともに、γ-アミノ酪酸(GABA)の増加などアミノ酸組成の変化が生じます。そのため、発芽玄米の成分値は通常の玄米とは異なります。また、発芽玄米を炊飯したさいには、玄米よりも柔らかく食べやすい特徴があります。

3-4. 赤米と黒米

「赤米」および「黒米」は、日本食品標準成分表2020年版(八訂)[以下、成分表2020(八訂)]で新たに収載された食品です。

赤米および黒米は、玄米の表面(果皮やぬか層)に色素を含む有色米です。赤米はタンニン系色素を含むため赤褐色を呈し、黒米はアントシアニン系色素を含むため黒色を呈します。

これらは「色素米」とも呼ばれ、市販されている製品では「古代米」の名称が用いられている場合もあります。

3-5. 玄米、発芽玄米、赤米、黒米の成分を比べてみる 

表4に、玄米、発芽玄米、赤米および黒米の八訂増補2023における収載値を示しました。食物繊維にいては、玄米と発芽玄米はプロスキー変法、赤米と黒米はAOAC2011.25法による分析値です。図3は両分析法の違いを示した模式図です。

AOAC2011.25法は、成分表2020(八訂)から採用された分析法で、プロスキー変法では測定できなかった低分子量食物繊維も測定できます。そのため、同じ食品を両方法で分析した場合、AOAC2011.25法の値はプロスキー変法より高くなる傾向があります。

このため、AOAC2011.25法で分析された赤米や黒米の食物繊維値を、プロスキー変法で分析された玄米や発芽玄米の値と単純に比較することはできません。仮に玄米や発芽玄米をAOAC2011.25法で分析した場合には、赤米や黒米に近い値になると考えられます。

なお、食物繊維の分析法についてくわしく知りたいかたは、本連載第54回 をご覧ください。

表5に発芽玄米、赤米、黒米と玄米の成分値を比較した値(相違率)を示しました(2式)。

玄米に比べて20%以上の相違があった成分をみると、発芽玄米、赤米および黒米はいずれも玄米に比べてカルシウムが多いことがわかります。また、発芽玄米では、鉄、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸も20%以上高い値を示しており、4食品の中では比較的さまざまな栄養素を多く摂取できることがわかります。

4. 見落としやすい材料「水」

米を炊くさいには、一般的には水道水が最も多く用いられています。日本の水道水は、「水道法」に基づき「人の飲用に適する水」として供給することが定められており、水質基準を満たすよう管理されています。また、病原微生物や有害物質、重金属などについても基準値が定められています。

八訂増補2023では、水道水に含まれる無機質(ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、セレン)の値が、地域別および原水区分別に収載されています(図4)。

一方、八訂増補2023に収載されている「めし(ごはん)」など、水を用いて調理する食品の分析には、イオン交換水(水道水から無機質を除去した水)が使用されています。そのため、実際に水道水で炊飯した場合の栄養価を考えるさいには、水道水由来の無機質についても考慮する必要があります。

今回は、ごはんの材料である米と水について記載しました。次回は、食品成分表に収載されている「めし」の値を使って栄養計算する際の留意点を記載します。

天候不順な日々が続いております。どうぞお健やかにお過ごしください。

【BOOK】
『八訂 食品成分表2026』
栄養計算ソフトほか全部で3つの電子版付録がついています

私たちが日ごろ食べている食品にはどんな栄養素がどのくらい含まれているのでしょうか? 「食品成分表」はそのデータ集です。日本栄養大学出版部では食と健康に関する最新資料とともにまとめて毎年出版しています。本連載の渡邊智子先生による解説も充実しています。
詳細はこちら

食品成分表の「ごはん」を理解する(適切な栄養計算①)【成分表連載60】
https://www.eiyotoryori-plus.com/webmagazine/food_composition_table/20728/
一覧へ戻る

有料会員登録

有料会員になると、さまざまな特典を
ご利用いただけます!

お申し込みはこちら
クイックAI検索 ページトップへ