
「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」 トクホや栄養機能食品のパッケージで見かける、こんな一文。主食はごはん、主菜は肉や魚料理、副菜は野菜かな、となんとなくわかってはいても、それぞれの役割は意外と知らないものです。毎日の食事での活用法を、日本栄養大学副学長の武見ゆかりさんに教えていただきました。


食事の栄養バランスを整えるための「主食・主菜・副菜」
食事の構成要素は、各料理の材料や栄養素の特徴などによって主食・主菜・副菜(このほかに果物、牛乳・乳製品)に分類されます。さらに、主食・主菜・副菜の分類は、「食事全体の中での役割」という面でも意味があります。
日本栄養大学の足立己幸(みゆき)名誉教授は、主食・主菜・副菜の定義と、その組み合わせの重要性を提案し※1、2、その考え方は、厚生労働省の健康づくりのための食生活指針に採用されました。また、健康日本21や食育推進基本計画の目標項目としても活用されています。主食は、ごはん、パン、めん類など穀物を主材料とする料理で、炭水化物の供給源となります。主菜は、魚、肉、卵、大豆製品を主材料とする料理で、たんぱく質や脂質の供給源となります。副菜は、野菜、きのこ、海藻、芋を主材料とする料理で、ビタミン、ミネラル、食物繊維の供給源となります。これら3つを組み合わせることにより、適切な栄養素摂取につながります。
さらに、足立教授は、食事全体における3つの料理の役割を提唱しています。すなわち、主食は、食事を構成する料理の中で中心的な位置を占め、ほかの料理の種類や量を決め、バランスのよい食事へ導く“リード役”を担っています。これを「主食のリード性」といいます。主菜は一食の総栄養素量の決定に大きな影響を及ぼす料理です。副菜は、味や色、香りなどの面で主食や主菜を補強し、食事全体に多様さをもたらします。
たとえば、主食が味のついていないごはんであれば、ごはんをおいしく食べるための料理(主菜や副菜)を組み合わせる必要があり、結果としてさまざまな食材を組み合わせた食事になります。そしてこれが、栄養バランスのよさにつながります。ところが、主食が味つきのごはんやパン、めん類の場合、ほかの料理がなくても「一食」として成り立ってしまい、栄養バランスが偏りがちです。
※1 足立己幸:民族衛生(1975)
※2 足立己幸:名古屋学芸大学健康・栄養研究所年報(2017)

各料理の役割
- 主食(ごはん、パン、めん類):おもな栄養素は炭水化物で、エネルギーのもとになる。ほかの料理の“リード役”となる。——主食が味つきのごはんやパン、めん類の場合は要注意。
- 主菜(魚、肉、卵、大豆料理):おかずの中心となる。たんぱく質や脂質を多く含み、血や肉となって体をつくるもとになる。
- 副菜(野菜、きのこ、海藻、芋料理):主食や主菜で足りない栄養素を補い、食事に色や味の多様性をもたらす。ビタミンやミネラル、食物繊維を多く含み、おもに体の調子を整える働きをする。
- 副菜(汁物):野菜や海藻がたっぷり入った汁物は副菜になる。
「主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を1日2回以上、毎日」が目標

主食・主菜・副菜を組み合わせて栄養バランスをとる方法は、自分で料理を作らない人、外食や総菜・弁当類などの利用が多い人でも、日常の中で栄養バランスをチェックしやすいという特徴があります。
料理を作らない人の場合、ふだんの生活で向き合うのは「料理」と、そのその組み合わせとしての「食事」であって、食材や栄養素はそれらの構成要素に過ぎません。でも、主食・主菜・副菜の考え方なら、料理を選ぶことで自然と食材や栄養素を選んでいることになります。一方で、自分で料理を作る人にとっては、食事のでき上がりからイメージして栄養バランスのよい献立を考えるのに役立ちます。食事の栄養バランスを自己チェックするときにも判断の目安になるでしょう。
目指したいのは、「主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を1日2回以上、毎日続ける」こと。もちろん、忙しいときや体調がすぐれないとき、中食や外食ですませたい、という日もあるでしょう。その場合でも、「主食・主菜・副菜を組み合わせて選ぶ」ことで、自然と栄養バランスが改善されます。
また、食事量全体のチェック、つまり食事からのエネルギー摂取量が消費量とバランスがとれているかは、体重を測ってモニタリングしましょう。個人のエネルギー必要量を正確に知ることはほぼ無理です。同じ性別、年齢、体格であっても個人差があります。したがって、自分の消費エネルギー量と摂取エネルギー量のバランスは、体重測定により把握する方法が、最も正確で簡単な方法です。どのような食事法を用いている場合でも、日々の体重測定の習慣をつけ、適正体重を維持することは、人生100年時代、一生の健康づくりに役立ちます。

つけ合わせ、丼料理などの「複合的料理」は、「一皿になるか」で考える
カレーライスや親子丼、にぎりずしなど、一皿にごはんと肉・魚・野菜などがいっしょになっている料理は、どう考えたらよいのでしょうか。このように主食・主菜・副菜を組み合わせた料理のことを「複合的料理」と呼びます。複合的料理で主食・主菜・副菜が量的にそろうかどうかは、“それぞれが独立した一皿の料理になる量か?”とイメージしてみると、判断しやすいでしょう。
具体的には、「食事バランスガイド※3」に、主食・主菜・副菜の1SV(サービング※4)の基準が示されており、主食・主菜・副菜を組み合わせてバランスよく食べるには、いずれも1SV以上確保したいところです。1SVの基準は、ごはんなら小盛り1杯、おにぎりなら1個、食パンなら1枚、主菜は肉や魚なら20〜30g、卵なら1個、納豆なら1パック、副菜は小鉢1皿程度です。これらの1SVの基準は、厳密には、主食は炭水化物量40 g、主菜はたんぱく質6 g、副菜は野菜・きのこ・海藻・芋の合計重量70 gと決められていますが、細かい数字にこだわる必要はなく、まずはざっくりとした感覚でとらえ、3つの料理を組合わせた食事になっているか考えてみましょう。
たとえばみそ汁に少量のねぎなどの野菜が入っている、あるいは主菜のつけ合わせにミニトマトが1〜2個添えてあるくらいでは70gにはまったく足りず、「副菜がある」とはいえないことになります。「別皿に盛ったとき、一皿の料理になるかな?」と考えてみるのが簡単です。
※3 厚生労働省および農林水産省が定める、日本の一般成人向けの食生活の目安。1日になにをどれだけ食べたらよいか、摂取する食品の組み合わせや摂取量の目安を示す。
※4 SV=サービング。料理を数える単位。
SVの基準
- 主食 1SV:ごはんなら小盛り1杯、おにぎりなら1個、食パンなら1枚……[炭水化物約40gに相当]
- 主菜 1SV:肉や魚なら20〜30g、卵なら1個、納豆なら1パック……[たんぱく質約6gに相当]
- 副菜 1SV:野菜・きのこ・海藻・芋を主材料にしたおかずを●〜●品。……[合計約70g]
バランスのよい食事のためのケース別アドバイス

【対策】
調理法の偏りや間食の量を見直してみましょう。たとえば主食がチャーハン、主菜が鶏肉のから揚げ、副菜が青菜いため、という食事では、3つの料理がいずれも油脂を多く含み、エネルギー過剰に。同様に、すべての料理の味つけが濃い場合は、食塩のとりすぎにつながります。料理によって味の濃淡をつけることが重要です。

【対策】
外食や中食(持ち帰り弁当など)が多いと、副菜(野菜など)が不足しがちです。外食の場合、めん類や丼物などの単品料理ではなくなるべく主食・主菜・副菜のそろった定食を選ぶか、副菜を追加するようにしましょう。持ち帰り弁当の場合は、副菜に相当する野菜や海藻がしっかり入っているかチェックする習慣をつけ、足りなければサラダなど副菜を別に買いましょう。

【対策】
お酒は主食の代わりにはなりません。主食である穀類から期待される栄養素には、エネルギーだけでなく、食物繊維やビタミンB群などがあります。お酒はあくまで嗜好品。1日200kcal(日本酒なら1合、ビールなら500ml)までを目安に。
[Column] 買ったらいくら? 手作りしたらいくら?
同じ料理でも、買って食べるのと自分で作るのでは費用が違います。たとえば朝ごはんの場合、外食でサンドイッチとコーヒー、または朝定食をとろうと思うと、500円前後かかります。
2026年現在、家庭でごはん(150g)、目玉焼き、納豆、小松菜と油揚げのみそ汁を作ると、材料費は1食あたり200円前後。米や卵の値上がりを反映しても、外食や中食に比べるとかなり低コストで主食・主菜・副菜がそろえられます。もちろん、手間や時間はかかりますが、ごはんはまとめて炊いて1食分ずつ冷凍しておく、汁物の材料も前夜に切っておくなど、くふうしだいで圧縮できるもの。「自炊」は節約にも一役買ってくれるといえそうです。
さらに、子どものいるかたにとっては、家庭での自炊は、恰好の食育の場。なにかを教え込むのではなく、日々のお手伝いや共食の機会を通じて、自然にバランスのよい食事の習慣が形成されていきます。
文 /武見ゆかり(日本栄養大学副学長) え/tent