解説!「蒸留酒なら血糖値の心配はいらないですよね?」|内科医と管理栄養士が健康診断で伝えたかった食事の話

健康 栄養 Book

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    食と健康に関するさまざまな疑問について、内科医の廣田尚紀さんと管理栄養士の榛葉有希さんがお答えするシリーズ。血糖値が気になる人がお酒を選ぶとき、「糖質ほぼゼロの蒸留酒なら安心」と思いがちですが、本当にだいじょうぶなのか? その根拠について、やさしく解説します。

    Q:蒸留酒なら血糖値の心配はいらないですよね?

    糖尿病のリスクを高める蒸留酒

     ウイスキー・焼酎・テキーラ・ジン・ラム。こういった蒸留酒ならば「血糖値が上がる心配はいらない」と思いますか?


    ——
    残念ながら、それは間違いです。

     蒸留酒であっても血糖値に影響し、飲みすぎると糖尿病のリスクも高めるためです。

    蒸留酒の血糖値への影響

     「蒸留」とは酒の原料を熱し、ほかのものをできるだけ取り除き、アルコールを濃くするような過程です。原料に含まれている糖質などもほとんどが取り除かれます。そのため、焼酎などの蒸留酒には基本的に糖質は含まれません。糖質が含まれないため、血糖値には影響しないと考える人もいるようです。

    しかし、糖質の有無にかかわらず、蒸留酒に含まれるアルコールが血糖値に影響します。その影響は、短期的なものと長期的なものとがあります。

     飲んでから数時間はアルコールは血糖値を下げるように働きます。アルコールを分解する役割があるのは肝臓。肝臓はほかにも多くの役割があり、そのうちの1つが「新しく糖をつくること」です。体の中に蓄えていたエネルギーを、糖に変えて血液の中に放って血糖値を上げます。アルコールは肝臓の「新しく糖をつくる」作業を邪魔するので、血糖値は下がりやすくなります。糖をつくる工場のラインを止めてしまうようなものです。

     「なんだ、血糖値が下がるなら問題ないじゃないか」と思うかもしれませんが、これはあくまでも数時間に限った話。長期的にはむしろ血糖値が上がりやすくなります。

     長期的には、アルコールは、飲みすぎると「血糖の容器」ともいえる細胞の、血糖値を調整する能力(耐糖能)を傷つけるように働きます。習慣的に飲む量が多いとダメージが蓄積し、血糖値を下げる能力がさらに落ちて、血糖値が上がりやすくなります。結果として、糖尿病にもなりやすくなります。糖を蓄えるためのダムの壁や扉が日常的に破壊されているようなものです。

    アルコールのカロリーにも注意

     アルコールに含まれるカロリーをとりすぎることでも、肥満になり糖尿病になりやすくなります。蒸留酒にもカロリーがあり、とりすぎると肥満になります。蒸留酒であるかどうかは関係なく、カロリーには注意したほうがよいでしょう。

    お酒は適量を楽しく

     そうはいっても酒をまったく飲んではいけないわけではなくて、適量があります。まだはっきりしない部分も多いものの、糖尿病の予防を目的とする場合、アルコール摂取量の上限目安は1日あたり約25g以下です。これは日本酒なら1合くらい、ビールなら500mLくらい。健康へのほかのリスクも考えると、この量よりもさらに少なめがすすめられます。毎日は飲まず、太らない範囲で、週に2~3日程度にとどめておきたいところです。

    アルコールの量に気をつけたい

     お酒の種類にかかわらず、アルコールは血糖値を調整する能力を傷つける性質があり、カロリーがあるため、糖尿病のリスクとなります。「蒸留酒ならいくら飲んでも大丈夫」ということは絶対にありません。お酒はときに人生を彩ってくれますが、溺れることなく、じょうずな付き合いができるとよいでしょう。

    A: いいえ、蒸留酒も糖尿病のリスクになります。

    【まとめ】

    ●蒸留酒も糖尿病のリスクになる

    ●アルコールは血糖値を調整する能力を傷つける

    ●アルコールの総量を適量に収めたい

    栄養相談の部屋から

     最近は糖質オフや糖質ゼロのビールを飲む人もいます。糖質ゼロのビールは、たとえば350 mL の缶1 本で比べると、普通のビールよりも約38 kcal カロリーが低くなります。これは体脂肪にすると、約5 g 分に当たるカロリーです(体脂肪1 kgあたり7200 kcal として算出)。
     
     しかしこういったお酒も、蒸留酒と同様にあくまでお酒です。アルコール自体にカロリーがあります。糖質オフや糖質ゼロのビールであれば太らないと思って飲む人もいますが、飲めば飲むほどとるカロリーも増えて、太りやすくなってしまいます。そしてなによりアルコール自体が糖尿病のなりやすさ、すなわち危険性を上げてしまいます。
     
     糖質ゼロであってもそうでなくても、飲みすぎには気をつけたいものです。

    【おまけコラム】 蒸留酒なら太らない!?

     酒は大別すると、醸造酒と蒸留酒の2種類があります。そのうちで、作る過程で酒を熱し、蒸留する過程を経るのが蒸留酒ですが、太らないというイメージを持つ方も多いようです。しかし、「ウイスキー・焼酎などの〝蒸留酒〟ならいくら飲んでも太らない」ということは残念ながらありません。

    すべての酒は必ずカロリーを含みます。酒に含まれているアルコールのカロリーは、1g あたり約7kcal。たとえばアルコールが20g 含まれる酒ならば、140kcalになります。その分のカロリーはほかの食事からとったカロリーと同様に、体重に影響します。

     「酒はエンプティカロリーだから太らない」という意見も耳にします。これは誤った理解です。エンプティとは英語で「空っぽ」を意味します。すなわち、エンプティカロリーとは、「栄養素をほとんど含んでいないカロリー」という意味です。決して「体重に影響しないカロリー」という意味ではないので注意してください。

     実際に、酒の種類による体重の増え方を調べた研究でも、その増え方に差はありませんでした。この研究によれば、醸造酒と蒸留酒の体重の増え方を比較しても、蒸留酒のほうが太りにくいということはありませんでした。

     ほかにも誤解しやすいのが「糖質オフ」「糖質ゼロ」と書かれている酒ですが、しっかり体重に影響します。糖質オフ、糖質ゼロの酒でも「カロリーゼロ」ではありません。含まれているアルコールの量等に応じたカロリーを含みます。

     蒸留酒であっても醸造酒であっても、結局はカロリーが体重に影響します。体重を気にするのであれば、酒の種類よりも、酒に含まれる総カロリーが重要です。酒のラベルに記載されているカロリーを確かめるようにしてみましょう

    廣田尚紀(ひろた なおき)
    広田内科クリニック副院長・産業医。本書のおもな本文・コラムを担当。
    内科医・医療法人社団 広田内科クリニック 新宿せたがや産業医事務所代表・(一社)日本職域栄養協会 理事など。東京慈恵会医科大学(勤務医)・東京女子医科大学(勤務医)、東京大学研究員(栄養疫学分野 研究員)などを経て現職。専門は糖尿病をはじめとする内科学全般および内科学における栄養分野。日々内科診療を行いながら、産業医としても働く人々の健康と向き合っている。博士(医学)・日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・日本内科学会認定 総合内科専門医・産業医(産業医学ディプロマ)など。

    榛葉有希(しんば ゆうき)
    管理栄養士・静岡県立大学助教。おもに本書の「栄養相談の部屋から」を担当。
    日本職域栄養協会理事、庵原薬局栄養指導担当。静岡県立大学食品栄養科学卒業後、研究と並行した、病院や特定保健指導での食事指導を経て現職。専門は臨床栄養学。研究と学生教育のかたわら、栄養指導の現場で健康管理や食事に関する疑問に日々向き合っている。博士(食品栄養科学)・病態栄養専門管理栄養士・健康運動指導士など。

    監修 佐々木敏(ささき さとし)|東京大学名誉教授・日本栄養大学客員教授。

    【6月20日発売予定の新刊情報】

    『内科医と管理栄養士が健康診断で伝えたかった食事の話』

    健康診断でよく指摘されるテーマについて、「専門家の当たり前」をわかりやすく解説する書籍です。

    ■廣田尚紀・榛葉有希/著
    ■978-4-7895-5468ー8
    ■四六判 296ページ
    ■定価:1,760円(本体1,600円+税)
    ■発行年月:2026年6月

    解説!「蒸留酒なら血糖値の心配はいらないですよね?」|内科医と管理栄養士が健康診断で伝えたかった食事の話
    https://www.eiyotoryori-plus.com/webmagazine/book-webmagazine/12281/
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