| 食と健康に関するさまざまな疑問について、内科医の廣田尚紀さんと管理栄養士の榛葉有希さんがお答えするシリーズ。ダイエットや筋トレ、スポーツ選手から高齢者まで、幅広い人々から注目を集める「プロテイン」の必要性について、やさしく解説します。 |
Q: 筋肉のためにプロテインはとったほうがよいですか?

そのプロテイン、本当に必要ですか?
——もしかするとあなたには必要ないかもしれません。
最近は「プロテインはとればとるほど健康によい」という風潮があるように感じます。しかし実際は、プロテインが必要な人は限られるでしょう。また、プロテインはとりすぎると健康への悪影響が心配です。
日本人でたんぱく質が不足している人は少数派
プロテインはたんぱく質をとるための栄養補助食品として広く使われています。プロテイン(=protein)はもともと〝たんぱく質〟という意味の英単語。今はたんぱく質をおもな成分とした栄養補助食品を指す呼び名にもなっています。
たんぱく質は体内で筋肉などの材料になり、成人に推奨される摂取量は1日あたり、男性でだいたい60~65g、女性で50gほどです。たんぱく質は筋肉だけではなく酵素やホルモンの材料にもなり、エネルギーとしても使われ、用途はかなり広範です。不足すると、特に高齢者などで筋力が落ちたり、生活に支障が出たりする原因になります。また、若い人でも不足すると筋肉量の減少などが心配されます。
今の日本では平均的には充分にたんぱく質を摂取しており、不足の心配はあまりありません。成人の平均的な摂取量は男性は約78g、女性は約66g。男女ともに先ほどの推奨量を上回ります。食事量の少ない高齢者などでは不足する場合も見られますが、たんぱく質不足が「国民全体の課題」といえるほどでもありません。
それだけのたんぱく質を本当にとれているのか心配になる人もいると思いますが、私たちは少しずついろいろな食品からとっています。肉などだけに含まれる特別な栄養素ではありません。たとえば、豚肉のしょうが焼き定食。豚肉のしょうが焼きで約17g、白米で約3g、ほうれん草のお浸しで約1g、豆腐のみそ汁で約4g、これでたんぱく質は計25gくらいになります。男性の推奨量は65gくらいなので、1食あたりの目安は約22gです。結果、この目安を超えることになります。
また、たんぱく質はとればとるほど筋肉が増えるわけではありません。体重1 kgあたり、1.3g以上とっても筋肉への影響は頭打ちになりやすいと報告されています。体重60 kgの人ならば約80gです。アスリートなど、運動量が並はずれて多い人は別かもしれません。しかし、通常程度の運動量の人はこの目安を参考にするとよいでしょう。
プロテインはとりすぎに注意
プロテインはとりすぎによって心配すべきことがいくつかあります。
1つ目はたんぱく質のとりすぎによる健康への悪影響。すでにたんぱく質が足りている人が、プロテインから余分にとりすぎると害になる可能性があります。 特に心配なのは腎臓です。腎臓は血液の量や質を調整し、ほかにもさまざまな重要な役割を持つ重要な臓器ですが、過剰なたんぱく質によって障害されるリスクが指摘されています。腎臓の機能が落ちると二度と元に戻らないことも珍しくありません。
2つ目はプロテインに含まれるほかの栄養素などの影響です。内容は商品によって異なるものの、たんぱく質だけではなくほかの栄養素や添加物も含まれることが一般的です。それらの中には過剰に摂取すると健康障害の原因になるものがあります。実際、プロテインを大量にとっている患者さんの血液検査データで、たとえば肝臓や腎臓の値が異常値を示すことがあります。プロテインを中止してもらうと、正常値に戻ることも経験します。
プロテインが必要な人は限られる
プロテインはとればとるほど健康によいわけではなく、過剰摂取はむしろ健康に悪いおそれがあります。そして一日3食きちんと食事をとれていれば、プロテインでたんぱく質を補充する必要がある人はそう多くはないでしょう。もしたんぱく質が不足しているなら、プロテインではなくまずは食事をしっかりとることをおすすめします。
A: たんぱく質がすでに足りていて不要な人が多いでしょう。とりすぎには要注意。
【まとめ】
●大半の日本人はたんぱく質は足りている
●「プロテイン」をとったほうがよい人は少数派
●まずは食事をしっかりとることがおすすめ
| 栄養相談の部屋から 栄養相談に来られる方には「私は今トレーニングをしていて、たんぱく質を毎日○グラムとっています」とお話しされる方がいます。でも食事内容をよくよく聞いてみると、その方の計算量よりも実際にはより多くのたんぱく質をとっていました。なぜでしょうか? ――じつは、主菜(肉や魚など)のたんぱく質量だけを計算して、主食(ごはんやパンなど)のたんぱく質は計算していなかったのです。本文にもあったように、主食にもたんぱく質が含まれています。たとえば白ごはんだけでも、お茶碗1杯を1 日3 回食べれば10 g くらいのたんぱく質をとっていることになります。 自分でたんぱく質の量を計算するときには、主食のたんぱく質量も忘れずに計算に入れてくださいね。 (榛葉有希) ![]() |
廣田尚紀(ひろた なおき)
広田内科クリニック副院長・産業医。本書のおもな本文・コラムを担当。
内科医・医療法人社団 広田内科クリニック 新宿せたがや産業医事務所代表・(一社)日本職域栄養協会 理事など。東京慈恵会医科大学(勤務医)・東京女子医科大学(勤務医)、東京大学研究員(栄養疫学分野 研究員)などを経て現職。専門は糖尿病をはじめとする内科学全般および内科学における栄養分野。日々内科診療を行いながら、産業医としても働く人々の健康と向き合っている。博士(医学)・日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・日本内科学会認定 総合内科専門医・産業医(産業医学ディプロマ)など。

榛葉有希(しんば ゆうき)
管理栄養士・静岡県立大学助教。おもに本書の「栄養相談の部屋から」を担当。
日本職域栄養協会理事、庵原薬局栄養指導担当。静岡県立大学食品栄養科学卒業後、研究と並行した、病院や特定保健指導での食事指導を経て現職。専門は臨床栄養学。研究と学生教育のかたわら、栄養指導の現場で健康管理や食事に関する疑問に日々向き合っている。博士(食品栄養科学)・病態栄養専門管理栄養士・健康運動指導士など。

監修 佐々木敏(ささき さとし)|東京大学名誉教授・日本栄養大学客員教授。
【6月20日発売予定の新刊情報】
『内科医と管理栄養士が健康診断で伝えたかった食事の話』
健康診断でよく指摘されるテーマについて、「専門家の当たり前」をわかりやすく解説する書籍です。
■廣田尚紀・榛葉有希/著
■978-4-7895-5468ー8
■四六判 296ページ
■定価:1,760円(本体1,600円+税)
■発行年月:2026年6月

