食品成分表の「エネルギー」の話(1) 「八訂成分表」では「エネルギー」が変わります【成分表連載6】

「八訂成分表」では「エネルギー」が変わります

渡邊智子 学校法人食糧学院 東京栄養食糧専門学校 校長

わたなべともこ東京栄養食糧専門学校校長。医学博士。千葉県立衛生短期大学、千葉県立保健医療大学、淑徳大学を経て現職。千葉県立保健医療大学名誉教授、千葉県学校保健学会理事長、産業栄養指導者会会長。文部科学省による日本食品標準成分表の策定に食品成分委員会委員等として30年にわたり携わり、成分表活用の研究・提言を行なう。千葉県食育推進県民協議会委員として千葉県の食育ツール(グー・パー食生活ガイドブック等)の開発・普及も行なっている。『八訂食品成分表2024』本表監修(女子栄養大学出版部)。著書に『これだけは知っておきたい!「食品成分表」と「栄養計算」のきほん』(講談社)ほか。

「日本食品標準成分表2020(八訂)」(以下、「成分表2020(八訂)」)の公表をお待ちかねだと思います。すでにエネルギー値が「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」(以下、「成分表2015(七訂)」)と比べて、変わることが周知されているので、気になっていることと思います。

すべての献立を新しい成分表で計算しないとだめですか?」の質問には、「大変だと思いますが、ぜひお願いいたします」がお返事です。きっと年度末に向かい、業務多忙なおりと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

食品成分表の成分は、日本語で表記していますが、エネルギ―は英語です。理由は定かではありません。

食品のエネルギー量は、分析しているわけではなく、エネルギー産生栄養素にエネルギー換算係数を乗じて計算しています。エネルギー産生栄養素量は、科学的に分析して得る値です。したがって、分析方法が同じであれば同一資料を分析した場合、同じ値を得ることができます。

一方、エネルギー換算係数は、いくつかあります。「成分表2015(七訂)」では、修正Atwater(アトウォーター)の係数、「日本食品標準成分表の改訂に関する調査」(科学技術庁資源調査会編資料)1)-4)による係数、FAO/WHO合同特別専門委員会報告5)のエネルギー換算係数などを食品により選択していました(「成分表2020(八訂)」では、選択することをやめました)。

また、栄養表示基準では、修正アトウォーターの係数を用いることとしています。

したがって、同じ食品のエネルギー値でも、成分表の係数と栄養表示の係数が異なるので、どちらを選択するかで異なるエネルギー量になります

「成分表2020(八訂)」では、エネルギー計算に用いるエネルギー産生栄養素を、これまでの成分(従来の分析法あるいは計算法によるたんぱく質、脂質、炭水化物)から新しい成分(下記)に変更しました。これらの値の数値は、これまで選択してきた値に比べ、エネルギー産生栄養素の実際の摂取量に近いといえます。

たんぱく質
:アミノ酸組成によるたんぱく質
=各アミノ酸量に基づくアミノ酸の脱水縮合物の量(アミノ酸残基の総量)

脂質
:脂肪酸のトリアシルグリセロール当量
=各脂肪酸をトリアシルグリセロールに換算した総和(組成から算出)

炭水化物
:利用可能炭水化物(単糖当量)
=利用可能炭水化物量を単糖に換算した総和

なお、これらの新しいエネルギー産生栄養素が収載されていない場合は、従来の成分を選択しています。

「成分表2020(八訂)」では、新しく選択するエネルギー産生栄養素のエネルギー換算係数を以下のように決めています。

「成分表2020(八訂)」のエネルギー換算係数
 アミノ酸組成によるたんぱく質:4 kcal
 脂肪酸のトリアシルグリセロール当量:9 kcal
 利用可能炭水化物(単糖当量):3.75 kcal

また、食物繊維総量は、新たに2 kcalとし、アルコールは、これまでどおり7 kcalです。

「成分表2020(八訂)」が公表されたら、糖アルコールや有機酸についてもご覧ください。

1) 科学技術庁資源調査会編:日本食品標準成分表の改訂に関する調査資料-日本人における大豆及び大豆製品の利用エネルギー測定調査結果-.科学技術庁資源調査所資料第70号(1979)

2) 科学技術庁資源調査会編:日本食品標準成分表の改訂に関する調査資料-日本人における動物性食品の利用エネルギー測定調査結果-.科学技術庁資源調査所資料第73号(1980)

3) 科学技術庁資源調査会編:日本食品標準成分表の改訂に関する調査資料-日本人における穀類の利用エネルギー測定調査結果-.科学技術庁資源調査所資料第92号(1981)

4) 科学技術庁資源調査会編:日本食品標準成分表の改訂に関する調査資料-日本人における油脂類の利用エネルギー測定調査結果及び主要食品の利用エネルギー値-.科学技術庁資源調査所資料第99号(1982)

5) FAO/WHO:Energy and protein requirements. Report of a Joint FAO/WHO Ad Hoc Expert Committee. WHO Technical Report Series, No. 522;FAO Nutrition Meetings Report Series.No. 52 (1973)

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