新米の季節になりました。秋の味覚の代表として楽しみにされている方も多いのではないでしょうか。
「ごはん(飯)」と、さまざまな秋の食材を用いた料理を組み合わせた食事は、食材それぞれの持ち味を引き立て合う和食の醍醐味といえます。
この季節には、「この食材にはどのような献立が合うだろうか」と考えながら、食事づくりを楽しまれているかたも多いことでしょう。
私たちはこうした食事の中で、「米」ではなく「飯」を食べています(前回参照)。食品成分表にも調理後の「飯」が収載されていますが、栄養計算ではどのように扱えばよいのでしょうか。今回は、食品成分表に収載されている「飯」を用いた栄養計算について考えてみます。
1.食品成分表の米と飯の関係
食品成分表では、「うるち米」と「うるち米 水稲めし(飯)」のように、調理前食品と調理後食品が対応して収載されています。
図1は、食品成分表に収載されている調理前の「米」と調理後の「飯」の関係を模式的に示したものです。
図1 食品成分表に収載されている調理前の「米」と調理後の「飯(ごはん)」の関係

食品成分表の分析では、まず試料となる米を充分に混合します。その米から一定量をとり分け、「米」の試料として栄養成分を測定します。
一方、同じ試料米から一定量を取り分けて炊飯し、でき上がった飯を「飯」の試料として栄養成分を測定します。
さらに、炊飯前後の重量を測定し、重量変化率を求めます。調理条件や調理手順もあわせて記録されます。
1-1.重量変化率とは
食品成分表では、重量変化率を次式で計算しています。
| 重量変化率=調理後の飯の質量(重さ)÷調理前の米の質量(重さ)×100 |
この式からわかるように、重量変化率は「調理前食品100 gから、調理後食品が何gできるか」を示す指標です。
八訂食品成分表増補2023年では、飯の重量変化率は210%とされています。これは、100 gの米を炊飯すると、210 gの飯になることを意味します。
いい換えると、100 gの米に由来するエネルギーや栄養成分が、炊飯後には210 gの飯として含まれていることを示しています。
図2に調理前の「米」と調理後の「ごはん(飯)」の重量変化率、エネルギーや栄養素の関係を示しました。ただし、重量変化率は重量の変化を示す指標であり、栄養成分が同じ割合で増減することを意味するものではありません。この点については後述します。
図2 調理前後の関係:「米 100 g」は「飯 210 g」

1-2.食品成分表の重量変化率と実際の炊飯との関係
家庭や施設で炊飯した場合、実際の重量変化率が成分表の210%と異なることがあります。
たとえば、重量変化率が220%であった場合を考えてみましょう。
これは成分表の飯よりも水分を多く(220-210=10%)含む飯であり、一般的にはやわらかい飯になります。同じ栄養素量を摂取するためには、成分表の飯よりもやや多い重量を食べる必要があります。
一方、重量変化率が200%であった場合は、成分表の飯よりも水分が少ない(200-210=−10%)飯であり、一般的にはかための飯になります。この場合は、同じ栄養素量を摂取するために必要な重量はやや少なくなります。
重要なのは、栄養計算のために毎回自分で重量変化率を測定する必要はないということです。食品成分表の「飯」の成分値は、炊飯による水分増加や栄養成分の変化を考慮した値です。
2. 重量変化率が成分表と異なる場合の盛り付け量
計画した栄養量に近づけるためには、飯の硬さに応じて盛付け量を調整することが有効です。
上述したように、重量変化率が成分表よりも多い場合は、盛付け量を多く、重量変化率が成分表よりも少ない場合は、盛り付け量を少なくします。
たとえば重量変化率220%の飯では、食品成分表の飯と同じ栄養量を提供するために、盛付量を約1.05倍にします(220÷210=1.05)。
重量変化率200%の飯では、食品成分表の飯と同じ栄養量を提供するために、盛付量を約0.95倍にします(200÷210=0.95)。
食品成分表の210%を標準的な飯と考えると、
やわらかい飯(重量変化率が高い)はやや多めに盛付ける
かたい飯(重量変化率が低い)はやや少なめに盛付ける
――そうすることで、提供される栄養量を計画値に近づけることができます。
3. 重量変化率と成分変化率は異なる
重量変化率と栄養成分の変化率は同じではありません。
飯の重量変化率は210%ですが、当然ながらエネルギーやビタミン類、ミネラル類が210%になるわけではありません。
一方、重量変化率は主として水分の出入りを反映した指標です。栄養成分は調理中の溶出や分解などの影響を受けるため、その変化の程度は成分ごとに異なります。
そのため栄養計算では、調理前食品ではなく調理後食品の成分値と重量を用いて計算します。これにより、実際の提供量や摂取量に近い栄養価を求めることができます。
4. 炊飯に用いる水
第60回で紹介したように、食品成分表の調理試験では、イオン交換水(水道水から無機質を除去した水)が用いられています。
しかし、実際の炊飯では水道水を使用します。
前回もご紹介しましたが、水道水にはナトリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、セレンなどの無機質が含まれており、特にカルシウムを比較的多く含んでいます(表1)。
そのため、実際の炊飯による栄養価を求める際には、水道水由来の無機質量も考慮する必要があります。
つまり、食品成分表に収載されている「飯」の成分値をそのまま用いるだけでなく、水道水から供給される無機質量を加味して栄養計算を行います。
表1 水道水のカルシウム(mg/100g)

5.飯の栄養計算をしてみましょう
5-1.栄養計算に必要な質量
調理に関係する質量(重さ)には次の3つがあります。
| 1 購入する食品(廃棄部位を含みます) 2 調理前食品(純使用量、すなわち廃棄部位を除いた可食部です) 3 調理後食品(調理前からの重量変化率で算出できます) |
食品成分表では、主要な食品では、調理前食品と調理後食品が収載されています。
なお、調理前食品の廃棄率を使い、使用したい食品の購入量を計算できます。
| 購入量 = 純使用量g ÷(100 – 廃棄率)× 100 |
5-2.調理後食品の質量を計算する
調理後食品の質量は次式で求めます。
| 調理後質量(g)= 調理前質量(g)× 重量変化率 ÷ 100 |
たとえば、100gのうるち米からできる飯の質量は「飯の重量変化率 210%」なので
| 100(g)× 210(%) ÷ 100 = 210(g) |
となります。
5-3. 飯のビタミンB1を計算する
栄養素量は次式で求めます。
| 栄養素量 = 選択した食品の成分量(100g当たり)× 摂取(提供)質量(g)÷ 100 |
たとえば、うるち米100gを炊飯した飯のビタミンB1を計算してみましょう。
| 成分表から得られる情報 ●ビタミンB1(mg/100g) …… うるち米 0.08、うるち米(飯)0.02 ●うるち米の重量変化率(%)…… 210 |
計算 100 gの米から炊き上がった飯全量のビタミンB1量
| 0.02mg × 210 ÷ 100 = 0.042mg |
となります。
一方、調理前の米100 gの値は0.08 mgです。こで計算した0.042mgとの差は、洗米や加熱などの調理操作によってビタミンB1が減少するためです。
実際の摂取量や提供量をより正確に把握するには、調理後食品である「飯」の成分値と重量変化率を用いる必要があります。
5-4. 飯のカルシウム量の計算する
カルシウムの栄養計算は、水道水由来のカルシウムも加味します。
| 成分表から得られる情報 ●カルシウム(mg/100g)…… うるち米 5、うるち米(飯)3、水道水(関東)1.77 ●加水量(g)…… 150(重量の1.5倍) ●重量変化率(%)…… 210 |
計算 100 gの米から炊き上がった飯全量のカルシウム量
| 飯由来カルシウム: 3 × 210 ÷ 100 = 6.30 mg 水道水由来カルシウム: 1.77 × 150 ÷ 100= 2.66 mg 合計 6.30 + 2.66 = 8.96 mg |
となります。
調理前の米100 gに含まれるカルシウム量は5 mgですが、炊飯後のカルシウム量は8.96 mgとなります。
これは、洗米などによる損失がある一方で、水道水中のカルシウムが飯へとり込まれるためです。その結果、調理後のカルシウム量が調理前より多くなります。
まとめ
私たちは米をそのまま食べるのではなく、「飯」として摂取しています。
そのため、実際の摂取量や提供量に近い栄養量を把握するためには、調理前食品である「米」ではなく、調理後食品である「飯」の成分値と重量変化率を用いて栄養計算を行うことが重要です。
重量変化率は栄養成分変化率とは異なるため、単純に重量変化率だけで栄養素量を換算することはできません。重量変化率は水分の出入りを示す指標であり、栄養成分の変化率とは異なります。調理による栄養成分の増減を適切に反映するためにも、調理後食品を用いた計算を心掛けましょう。
次回は、うどんを例として調理後食品を用いた栄養計算を考えてみます。
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