モーリタニア と日本の意外なつながり
モーリタニアと日本は地理的には遠く離れていますが、意外な共通点があります。
- タコ: 日本でおなじみの「たこ焼き」や刺身に使われるタコの多くは、じつはモーリタニアからの輸入。市場によっては日本の輸入タコの約3〜4割を占める年もあります。一方で、モーリタニア人はおもに輸出のためにタコをとりますが、ふだんの生活で食べることはあまりないようです。
- お茶文化: どちらの国も、「ゆっくりとお茶を楽しむ」時間をたいせつにしている点が似ています。
- 穏やかな国民性: おもてなしの心、自然との共生をたいせつにする姿勢にも共鳴する部分があります。


〈1枚目〉タコや魚などをとる漁師で賑わう魚市場。〈2枚目〉日本のスーパーで売られているモーリタニア産の真ダコ。
ウェルビーイング活動での出会い
筆者とファティマさんは、モーリタニアでユニセフ(UNICEF)の同僚として出会いました。筆者は教育部門、ファティマさんは子どもの保護部門を担当し、子どもの幸せやウェルビーイングのために活動するという共通の情熱を持っていました。
ユニセフモーリタニア 事務所では、今回ご紹介したようなアタイア(ミントティー)を注ぐ「お茶くみ係」が雇われており、数十部屋もある事務所をその係が一日に3回は訪れて、各部屋でお茶を注いでくれました。
「郷に入っては郷に従え」ということで、筆者も最初の数か月は毎日複数回のアタイアをありがたく飲んでいました。しかし、糖分制限をする必要があったため途中からお断りすることに。しかし、そのお茶くみ係のかたや同僚も、快く受け入れてくれていたのを覚えています。
そんなお茶が身近な職場での業務で、私とファティマさんに共通していたのは、マリ難民支援とモーリタニア の若者支援でした。
モーリタニア では、隣国から逃げてきたマリ難民の受け入れをしており、当時(2018年)で約6万人のマリ難民(内、子どもが半数以上)が難民キャンプで暮らしていました。サヘル地域の中で最も多くマリ難民を受け入れている国の1つとなっていましたが、すでに最貧国であったモーリタニア(ホストコミュニティ)側が、45℃を超える気温で衛生環境も悪く、病院や学校もない。そんな地域に新たに難民を受け入れるということで、子どもの保護や教育でさらなる支援のニーズが高まっていました。そんな背景の中、ファティマさんと筆者は別の分野にいながらも協働する機会がありました。
また、首都のヌアクショットでも、若者のエンパワーメントのための活動(スキルアップ、就職支援、啓発)を協力して行ない、少しでも次世代が自分らしく生きていけるための後押しをしていました。
その後モーリタニアから異動した筆者でしたが、国を離れてもファティマさんと連絡をとり続け、お互いの活動(子どもや大人のウェルビーイングを支える)の進捗を共有し、刺激を与え合っています。
今回の朝ごはん企画でも快く協力してくださったことに、心から感謝しています。


〈1枚目〉首都ヌアクショットで若者活動をする筆者。ファティマさんとも分野は違えど、ときどきいっしょに仕事をすることがあった。〈2枚目〉マリ難民を受け入れるモーリタニアのホストコミュニティでの若者支援活動をする筆者。

異動時の送別会にて。ファティマさんたちからのサプライズプレゼントはモーリタニアの伝統衣装ブーブーでした(筆者ともう一人の職員)。
「砂の流れとともに、焦らず、ゆっくりいこう」
モーリタニアに約2年住んだ筆者がモーリタニアから学んだのは、「焦らず、ゆっくり行こう」ということです。
仕事で締切に追われているのにもかかわらず、マイペースで焦らない姿にときどき戸惑うこともありました。しかし、砂漠と海という自然環境では「焦ってもしょうがない」ということを日々の暮らしの中で体得するのでしょう。現代の忙しさの中で忘れがちな「余白」を取り戻すヒントが、モーリタニアの人々の暮らしの中にあるように感じました。
次回はどの国の朝ごはんが登場するか、どんな繋がりがあるか、どうぞお楽しみに!

【筆者プロフィール】岡本啓史(おかもと・ひろし)●国際教育家、生涯学習者、パフォーマー。これまで国連やJICA等で5大陸・45カ国の教育支援を実施。ダンサー、役者、料理人、教師の経歴も持つ。学びに関するブログを5言語で執筆し、ライフスキル教育、講演活動、グローバル学び舎3L-ミエル運営など、日本内外で国際理解・幅広い学びやウェルビーイングの促進に注力中。著書『なりたい自分との出会い方:世界に飛び出したボクが伝えたいこと』(岩波書店)『せかいのあいさつ』全3巻(童心社)監修。サイト/SNS:https://linktr.ee/mdhiro |