モーリタニア「世界の朝ごはんめぐり」Webマガ版2025年9月号

今回のファティマさんの朝食は、モーリタニアでかならずといってもいいほど出てくるミントティー「アタイア」とフランスパン(バゲット)です。モーリタニア の朝食は、いわゆる「ごはん」ではなくアタイアが主役になることが多く、パンがその場にあるときは食べるけど、なければアタイアだけで過ごすこともあります。

まずはお茶を濃く作り、そのあとにミントと砂糖を入れていっしょに煮込みます。だいたい一杯のお茶は、3 回連続で提供されます。最初のお茶(Lewel)はとても濃く苦く、2杯目(Niyel)はやや軽く、3杯目(Talat)は甘く仕上げられるのが一般的です。

このお茶文化は家庭、友人同士でも、そしてゲストを迎える場でも欠かせない伝統となっており、モーリタニア やモロッコなどで、以下のようなことわざにもなっているとのことです。

人生の労苦や試練、人間関係の絆を表わす力強さ、そして最終的に訪れる安らぎや穏やかさをイメージさせる表現です。3杯を通して味わい、時間や人との交流が変化し、段階を追って深まっていく様子を巧みに表現しています。

さらに「よいお茶」をいれるためには、“3つのJ”がたいせつだとされます:

  • Jmaa(集まり):仲間といっしょにいること
  • Jmarr(炭火):じっくりと火を通すこと
  • Jarr(ゆっくり):時間をかけてゆったり味わうこと

45℃以上に気温が上がり、うだるような暑さが特徴のモーリタニアや近隣のアフリカ諸国で、人々がアタイアを飲むことには合理的な理由があるといわれています。ミントには直接体温を下げ、気分を爽快にし、交感神経の興奮をおさえる効果もあるとされ、アタイアで水分とることによって体調を整えることができます(一方で、アタイアに含まれる糖分の摂りすぎも問題視されています)。

そして、他の国ではパンなどがメインでお茶はサブ的な扱いが多い一方、ここではその逆というのも興味深いかもしれません。さらに、フランスの元植民地でもあるため、首都だけでなく農村部でも、安くておいしいフランスパンが手に入るのがモーリタニアです。