古くから、私たち日本人のおなかと心を満たし続けてきた和菓子。食材や製法が豊かになるとともに、その味わいや表現力は多彩に進化してきました。また、それだけにとどまらず、“栄養”面でも注目され、スポーツの現場における優れた補食(※)としても推奨されています。今回は、スポーツ栄養学を専門分野の一つとし、アスリートのパフォーマンス向上や「勝てる体」を作るための指導・研究を行なっている日本栄養大学 栄養学部 上西一弘教授と、教授がスポーツシーンにおける補食食品としてすすめてきた和菓子『福蔵』の製造元である川越菓匠 くらづくり本舗 社主 中野英幸氏の特別対談を開催。「食文化の継承」、そして「競技力の向上」の両面から、和菓子の可能性を語っていただきました。
※アスリートなどが必要とするエネルギーや栄養素を、朝・昼・夕の3食だけで充分に摂取しきれない場合に、不足分を補う食事。
小豆ともち━━ 2種類の炭水化物食品で血糖値の上昇をゆるやかに

[上西教授] 和菓子をスポーツ栄養学の観点でとらえると、エネルギーを補給する糖質が多く、補食として非常に優れた特長を持つことがわかります。小豆、米、きな粉など、日本人にとってなじみの深い食材は体への負担が少なく、消化吸収の速さ、脂質の少なさなども、競技前の効率的なエネルギー補給、競技後の迅速な体力回復に役立ちます。
40年以上もの間、和菓子の製造と普及に尽力されてきた中野さんは、和菓子をスポーツ時の「補食」として意識されたことはありますか?
[中野氏] いいえ、私たちは、地元・川越を中心とした埼玉県の“歴史”や“文化”を伝える一つの手段として、和菓子作りに一生懸命とり組んできたというのが正直なところで、それ以外の側面にまで知識や考えが及ぶことはなかなかありませんでした。

そのため、上西先生の講演を聴いた友人から、先生が高校生を対象に、私どもくらづくり本舗の主力商品である『福蔵』をすすめてくださったと聞いたときには、非常に驚きました。皆さまに愛されるおいしさを愚直に追求し続けてきた結果、スポーツ選手を支える商品にもなっていたというのは、とてもうれしいことです。それを機に、上西先生とも交流させていただくようになり、貴重なお話を伺う機会も増えましたよね。
——改めて、上西教授は『福蔵』のどんなところを評価されているのでしょうか。
[上西教授] 『福蔵』は、最中の中に小豆ともちという異なる炭水化物食品が使われていることが大きいです。これにより、血糖値の上昇をゆるやかにし、その後の持続力を高める働きが期待できます。腹もちもいいですしね。また、小豆に含まれるたんぱく質ポリフェノールは、糖質の働きを助け、筋力の強化にも有効ですし、もちはエネルギー密度が高いため、少量で効率的にエネルギーを確保することができます。
リフレッシュのおやつも、洋菓子から和菓子へ置きかえを
——特にどのような競技に適しているのでしょうか。
[上西教授] 持久力が必要で、体を大きく保ちたいラグビーや野球の選手にすすめることが多いですね。以前、ラグビー部に差し入れたときは、皆さん体が大きいのでずっしりとボリュームのある『福蔵』も、2つずつくらいペロリと食べていました。
体重を増やしてはいけないスポーツにおいても、リフレッシュのためのおやつとして洋菓子やスナック菓子を食べている人がいれば、脂質が少ない和菓子への置きかえをすすめています。もちろん、洋菓子やスナック菓子を否定するということではなく、おやつやごほうびとして好きなものを食べるのはいいことですが、“補食”という観点で考えたときには、やはり和菓子をすすめたいですね。

[中野氏] 私たちは和菓子が持つ“伝統”をとてもたいせつにしていますが、上西先生は和菓子で栄養補給をすることの意義をどうとらえていますか?
[上西教授] 伝統がある、長く残っているということは、人々に受け入れられてきた理由があるということ。たとえば、江戸時代の人々は、長い距離を徒歩で移動していました。そのため、街道にはお団子屋さんが点在し、旅人たちはそこでエネルギーと水分を摂取し、体力を回復させながら目的地を目指しました。当時は今のように栄養学が発展していなかったはずですが、人々は暮らしの中で和菓子の可能性を見いだしていたわけです。そうして現代まで紡がれてきた食の伝統を、私たちも次世代へつなぐことはたいせつだと思います。
情報に左右されず、さまざまな和菓子にチャレンジを
――ほかにも、団子や大福、まんじゅう、どら焼きなど、和菓子の種類は多彩です。“自分に合う和菓子”はどのように見つけるのがよいでしょうか。
[上西教授] これはもう、実際に食べてみることしかありません。『福蔵』はもちろん、それ以外の和菓子についても、練習や試合の前後に食べてみて、その結果、最もよいコンディションを保てたもの、よいパフォーマンスを出せたものが、“自分に合う和菓子”です。最近はインターネットにさまざまな情報があふれ、有名なスポーツ選手の食に関するルーティンなどが紹介されると、すぐにその方法が流行することがあります。しかし、だれかにとってよい食品が、自分にとってよいとは限らないことも多くのかたに知っておいていただきたいですね。
――昨今では、スーパーやコンビニエンスストアの棚に、さまざまな栄養食品が並んでいます。それらと和菓子との違いをどう考えていますか?
[上西先生] いわゆる栄養食品の多様化を見ると、世間の健康意識の高まりを感じますね。栄養を補給するという目的で食べるなら、そういった食品もとても有効だと思いますが、食べて「おいしい」「楽しい」という部分がないがしろにされがちであるとも感じます。
[中野氏] そういう意味では、私たちくらづくり本舗は、明治20年の創業から、味、そして素材にこだわってきました。『福蔵』に使用しているのは、厳選した国産もち米を香ばしく焼き上げた最中種(皮)と、北海道十勝産の小豆を、熟練の職人がていねいに渋きり、本炊き、蒸し炊きした、風味豊かな自家製あん。そして、国産のもち米をきめこまかなもち粉に生成し、水分を加えてじっくりと蒸し上げ、砂糖・水あめを加えてていねいに練り上げた「福餅」です。
それぞれの原材料の加工工程には細心の注意を払い、最中種、最中餡、福餅が絶妙なバランスで調和した極上の一品に仕上げています。
若者の和菓子離れが進む昨今ですが、上西先生をはじめ、多くの研究者のかたがたの日々のご尽力により、スポーツ栄養学における和菓子の有用性を示すエビデンスが生まれているのはとてもありがたいことです。若い世代に、また違った角度から和菓子のよさをアピールするチャンスをいただいたと思っています。
[上西教授] もちろん、和菓子の有用性は体力がある若年世代に特化したものではないので、小さなお子さんや高齢のかたにも、改めておすすめすべきだと思います。

――上西教授は、スポーツを楽しむ人々のために、今後どのような和菓子があるとよいとお考えですか?
[上西教授] 炭水化物、たんぱく質、糖質が摂れるあんこはかならず使用したほうがよいでしょう。また、運動することで汗を大量にかいてしまうので、塩大福のように食塩を少し補えるような和菓子が増えてもいいですね。
[中野氏] われわれは甘味を引き立たせるために塩を使っていますが、そういわれると塩大福はとても理にかなった和菓子ですね。ちなみに、さつま芋はどうでしょう。
[上西教授] さつま芋もいいと思いますよ。
[中野氏] さつま芋は地元・川越を代表する食材です。季節を表わし、土地を表わす、そんな伝統ある和菓子の役割は失わず、スポーツ選手たちをサポートする和菓子が増えれば、ますます和菓子の可能性は広がっていきますね。

日本栄養大学 栄養学部 教授
上西 一弘
徳島大学医学部栄養学科卒業、同大学院栄養学研究科修士課程修了。博士(栄養学)。女子栄養大学(現・日本栄養大学)助手、講師、助教授を経て2006年より現職。専門は栄養生理学、食事摂取基準論、スポーツ栄養学。
有限会社 くらづくり本舗
社主 中野 英幸
平成29年に有限会社くらづくり本舗 代表取締役社長に就任。現在は社主を務める。その傍ら、令和3年に第49回衆議院議員総選挙に初当選し、以降第50回、第51回と連続当選。現在は総務大臣政務官を務める。

【有限会社 くらづくり本舗】
明治20年創業の和菓子の老舗。埼玉県川越市を中心に、埼玉県で39店舗・東京都内1店舗を展開する。
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