◆問い
血液中の尿酸は腎臓で濾されて尿の中に捨てられます。これを妨げる物質があります。すると、血液中に尿酸がたまり、高尿酸血症や痛風になります。この物質はなんでしょうか?
次の3つの中から1つ選んでください。答えは本文中にあります。◻ A プリン体
◻︎ B アルコール(エタノール)
◻︎ C たんぱく質
ここ数年の地球温暖化(というよりも熱帯化)は尋常ではありません。最高気温が35℃を超える猛暑日が夏の日常になってきました。かつては、海の家やデパートの屋上のビアガーデンなどで風に吹かれながらビールを飲むのが夏の楽しみの一つでした。もちろん大ジョッキです。それが最近はもっぱら冷房の効いた部屋の中で、風情がなくなってしまいました。それ以上に痛風が気になるようになりました。
痛風と高尿酸血症
痛風は血液中の尿酸濃度が上がりすぎて、足の指の関節などで尿酸が結晶になり、白血球が結晶を異物とみなして攻撃することによって炎症と痛みが起きる病気です。このような症状はなくても、血液中の尿酸濃度が高くなった状態が高尿酸血症です。高尿酸血症は、痛風だけでなく、慢性腎臓病の原因にもなります。この観点からも注意しなければなりません。
プリン体
痛風と高尿酸血症と聞いて気になるのが、プリン体です※。 プリン体は細胞が分裂したりエネルギーを産生したりするときにたんぱく質からできる物質で、分裂が旺盛な細胞に豊富に含まれます。代表的な食品は肝臓(レバー)です。けれども、動物の筋肉は一定の割合でつねに新しい細胞に入れかわっていますから、すべての肉や魚に一定量のプリン体が含まれています。一般的には植物は動物ほど活発に細胞分裂をしていません。ですから、植物性食品よりも動物性食品にプリン体は豊富です。ただし、動物性食品でも、卵(無精卵)や牛乳には含まれていません。
発酵は、酵母などの微生物の増殖ですから、細胞分裂そのものです。したがって、発酵食品は、発酵に使った微生物が発酵食品の中に入っていればプリン体も入っていて、発酵に使った微生物が発酵食品に入っていなければプリン体も入っていないことになります。お酒では、酵母やその一部が入っているのがビール、日本酒、ワインなどの醸造酒で、特にビールに豊富です。一方、蒸留によって酵母もプリン体も除かれているのが焼酎やウイスキーなどの蒸留酒です。
プリン体・たんぱく質・アルコール
プリン体を食べると体の中で尿酸に変わります。したがって、プリン体をたくさん食べると高尿酸血症になると考えられます。しかし、体はそんなに単純ではありません。
体の中や血液中のプリン体は、食品から摂取したプリン体と、体の中でたんぱく質から作られたプリン体の2つに由来します。そして、余分なプリン体は尿酸になり、腎臓に運ばれて、尿の中に捨てられます。たんぱく質は血液中の尿酸が尿の中に捨てられるのを促し、血液中の尿酸が増えすぎるのを防いでいます。このおかげで、極端でない限り、たんぱく質を多めにとっても高尿酸血症や痛風になるわけではありません(出典①②)。けれども、たんぱく質の豊富な食品、特に動物性食品は、プリン体も豊富な傾向があります。たんぱく質はだいじょうぶだと油断すると、プリン体のとりすぎになります。このあたりについては別の機会に深掘りしてみたいと思います。
ここで第三の物質、アルコール(エタノール)が登場します。アルコールはプリン体が尿酸に変わるのを促し、その一方で、血液中の尿酸が尿の中に捨てられるのを妨げます。つまり、アルコールは血中尿酸濃度を上げる作用を二重に持っています。焼酎やウイスキー、プリン体フリーのビールなら高尿酸血症の心配はないのではなく、アルコールが入っている限り、高尿酸血症のリスクがあるわけです。そう考えると、ビールなどプリン体が入っている醸造酒には、血液中のプリン体が増えることを介して、血液中の尿酸が増えるしくみが合計3つもあることになります。これらの関係を図1にまとめてみました。あくまでも概念図ですが、3つの物質(プリン体、たんぱく質、アルコール)と尿酸の関係がわかると思います。
図1 プリン体と尿酸の代謝(合成と排泄)を理解するための概念図
核酸は細胞が分裂するときにできる物質、ATP(アデノシン三リン酸)は細胞でエネルギーが作られるときに働く物質。

出典① Lee SJ, et al. Recent developments in diet and gout. Curr Opin Rheumatol 2006; 18: 193-8.
飲酒と高尿酸血症(慢性効果)
おもに飲んでいるお酒と血清尿酸濃度の関連を8万人近い日本人成人男女で調べた研究の結果が図2です(出典③)。1日あたりのアルコール摂取量が1ドリンク(エタノールにしておよそ20g)増えた場合の血清尿酸濃度の変化量で示してあります。まずわかるのは、どのお酒でも、飲めば血清尿酸濃度が上がることです。これは先ほどの説明から容易に想像されます。