名前は知っている人が多い「オランダ」ですが、この国からなにを思い浮かべますか?
風車、チューリップ、ミッフィーや自転車。それともサッカーの試合でオレンジ色に染まるサポーターでしょうか。
オランダは、ヨーロッパ北西部に位置する、九州とほぼ同じ大きさの小さな国ですが、貿易や芸術、土木技術、世界初の「株式会社」のしくみ、そして国際関係を通して、世界の歴史に大きな影響を与えてきました。現在では、自転車文化や世界有数の水管理技術(国土の約4分の1が海面下)、そして国際機関が集まる国としても知られています。
今回は、朝ごはんを通してオランダをのぞいてみましょう。



今月の案内人:リーダーシップとキャリア開発のコーチ、レネさん
今回ご紹介するのは、オランダのハーグ(デン・ハーグ)に暮らす教育者・コーチ・生涯学習者のレネ・ファン・ドンゲンさんです。
30年以上にわたり国際開発分野で活躍したのち、現在はハーグを拠点に、「Rene van Dongen Coaching」というコーチング事業を運営し、個人やチームを対象にリーダーシップとキャリア開発のコーチとして活動しています。
あき時間には、散歩や旅行、そして家の中でなにかを作ることが好きだそうです。

オランダの首都はアムステルダムですが、政府や国会、王室の執務機関が置かれているのは、レネさんが住むハーグです。
この街には、英語名の「The Hague」、オランダ語では日常的に「Den Haag」、正式名称の「’s-Gravenhage」という3つの呼び名があります。ちなみに、日本で使われる「オランダ」という国名も、正式名はNederland 「ネーデルラント」、英語ではNetherlandsです。
また、ハーグは国際司法裁判所(ICJ)や国際刑事裁判所(ICC)をはじめ、多くの国際機関が集まり、平和と正義を支える都市として世界的に知られています。さらに、芸術の街としてフェルメールの『真珠の耳飾りの少女』、モンドリアンの『ヴィクトリー・ブギウギ』や、美しい海岸も有名です。夏場のビーチでは、紫外線対策として、無料で利用できる日焼け止めコーナーを設置している自治体もあります。
オランダの食文化が垣間見える、レネさんの朝ごはん:トスティ・ミューズリー・ハーゲルスラッハ
レネさんにとって朝食は、一日を元気に始めるためのたいせつな時間。ふだんは6時から7時ごろに朝食をとるそうです。
今回ご紹介するレネさんの朝食メニューは、シンプルながらも栄養バランスのよい内容です。
- オランダが誇る乳製品(ヨーグルト)をかけたミューズリー
- ハムとチーズをはさみ、香ばしく焼き上げた「トスティ」と野菜
- 新鮮な果物
- 年季の入ったコーヒーメーカーでいれるコーヒー

バランスを考えた定番メニュー

ヨーグルトは、オランダの食文化を象徴する食品の一つです。酪農が盛んなオランダでは、乳製品が古くから人々の暮らしを支えてきました。シリアルや果物と組み合わせることで、忙しい朝にもぴったりな栄養満点の朝食になります。
また、ハムとチーズをはさみ、「トスティアイゼル(tosti-ijzer)」と呼ばれるホットサンドメーカーで香ばしく焼き上げる「トスティ」も、オランダで親しまれている定番メニューです。
レネさん曰く、「トスティはパン・チーズ・ハムを使うのでカロリーが高く、私はパン2枚で作る1つのトスティで充分だから、中央で1組だけ焼いています」とのこと。


そしてときには、「ハーゲルスラッハ」と呼ばれるチョコレートスプレー(細長いチョコレート粒)をのせたパンを食べることもあります。
外国人には驚かれることが多いそうですが、オランダでは「チョコレートスプレー」はデザートではなく朝食によく登場します。 子どもだけでなく、大人にとっても、ごく普通の朝の定番メニューなのです。
レネさんが子どものころは、「朝食は甘いものと塩味のあるものを組み合わせたバランスのよい食事にする」という教えがあり、チョコスプレーをのせたトーストはちょっとしたごほうびとして、チーズやピーナッツバターなど塩けのある食べ物のあとにとることが多かったそうです。
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日本とオランダの共通点:水・遊び・価値観とは?
遠く離れた日本とオランダですが、じつは長い交流の歴史があります。
- 400年以上続く交流
江戸時代、日本が鎖国政策をとっていた時代にも、オランダは長崎・出島を通じて唯一交易を続けた西洋の国でした。その交流は「蘭学」として、西洋医学や科学、技術を日本へ伝える大きな役割を果たしました。 - 水とともに生きる国
オランダでは国土の多くが海面より低いため、堤防や運河、水管理技術が発達しました。一方、日本も海に囲まれ、豪雨や自然災害とともに暮らしてきたことから、防災や土木技術が発達しており、水とともに生きる両国の共通点があります。 - よく似た遊び
ユニセフの子どもの幸福度調査では、オランダの子どもたちは精神的幸福度で世界1位、身体的健康では4位と高い評価を受けています(日本は精神的幸福度32位、身体的健康1位)。
そんな子どもにやさしいオランダでは、遊び心を子どもだけでなく大人も忘れない文化が根付いています。その一つが後述する「クックハッペン(Koekhappen)」という遊びです。興味深いことに、日本の「パン食い競争」によく似た遊びで、ひもでつるしたクッキーを、手を使わずに食べるゲームで、ときには目隠しをして行なわれます。 - サッカーのつながり
日本とオランダは、大盛り上がりを見せたFIFAワールドカップ2026北中米大会の予選グループを含めて、国際サッカーAマッチでこれまで4回対戦しました(日本の1分3敗)。プレーの背景には、チームワークや規律、努力をたいせつにする共通の価値観があります。
出会いのきっかけは「コーチング」:学びや自己成長、創造性の情熱、そして奉仕の精神
レネさんとは、私が2020年にユニセフで働いていたころ、オンラインで知り合いました。ちょうど同じ時期にコーチの資格取得を目指して学んでいたこともあり、学びや自己成長、創造性への情熱を共有する中で親しい友人となりました。
私がレネさんを尊敬している理由の1つが、その奉仕の精神です。ユニセフでフルタイム勤務を続けながら、およそ100人もの職員に無償でコーチングを提供し、多くの人の成長を支えていました。
その後、筆者が神戸で実施したグローバル学び舎3L-ミエルのオランダ紹介イベントにも、現地ゲストとしてオンライン参加してくださいました。時差があるにもかかわらず、朝早く起きてハーグからオンラインでつながりながらも自転車を運転し、最後の案内地として風車に連れて行ってくれました。ビーチの様子を見せてくれたあとで、彼が最後に風車に到着した瞬間、写真では見ることのできない臨場感から、イベント参加者から大きな拍手が起こったことを今でもよく覚えています。
その後、先ほど紹介したオランダの遊び「クックハッペン」をみんなで楽しみ、オランダのクッキーや文化を体験しました。
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初めてレネさんに出会ったときに、「この人の学びは終わることがない」と感じました。印象的だった彼の一言があります。
「学びのない一年は、失われた一年だ」
この「世界の朝ごはんめぐり」も、広い世界各地の朝食を通して、新しい発見や学びをお届けするシリーズです。毎日の朝ごはんには、その土地の文化や歴史、人々の暮らしがさりげなく詰まっています。
もしオランダを訪れる機会があれば、チューリップや風車、自転車だけでなく、ぜひ朝食も楽しんでみてください。温かいコーヒー、香ばしいトスティ、そしてチョコレートスプレーをのせたパン。そこには、シンプルさをたいせつにする暮らしや、大人も子どもも楽しむ文化、そして海より低い土地というきびしい環境の中ではぐくまれてき、たくましさと知恵が息づいています。
次はどんな朝ごはんと、どんな物語に出合えるでしょうか。
次回の「世界の朝ごはんめぐり」もお楽しみに。
【レネさんのSNSについて】
レネさんは、コーチとして、クライアントがより明確な方向性や目的を見つけられるよう伴走しています。「鏡」で自分を見つめ直し、「地図」で可能性を探り、「コンパス」で人生の意味や目標へ向かうという考え方をたいせつにしています。