リベリアでは英語が公用語ですが、16以上の民族グループが存在し、それぞれが独自の言語や方言を持っています。その中でコロクワは、人々をつなぐ共通の言葉として全国で使われています。
さて、このあいさつ以外に、リベリアについて知っていることはありますか?
リベリアは、アフリカの歴史の中でも特別な存在です。1847年、アメリカから解放されたアフリカ系奴隷によって建国され、アフリカ初の共和国となりました。国名は「自由(liberty)」に由来し、首都モンロビアは移住を支援したアメリカのモンロー大統領の名にちなんでいます。
またリベリアは、アフリカ初の女性大統領(2006〜2018年)エレン・ジョンソン・サーリーフを選出した国でもあります。
国旗はアメリカの星条旗に似ており、そこには歴史的なつながりが表われています。一方でリベリアは、他の多くのアフリカ諸国と異なり、ヨーロッパによる正式な植民地支配を受けなかった国でもあります。

内戦やエボラ出血熱の流行など、多くの困難を経験してきたリベリア。それでもなお、人々は力強く立ち上がり、着実に歩みを進めています。年齢中央値は約19歳。若さとエネルギー、そして未来への可能性に満ちた国です。


それでは、朝ごはんを通して、この国の文化をのぞいてみましょう。

今月の朝ごはんゲスト:シディキさん
今回は、リベリア出身のシディキ・カマラさんの朝ごはんを紹介します。

彼は15年以上の経験を持つ木彫り職人で、伝統的な仮面や彫像、文化的工芸品を制作しています。アフリカの文化を世界に伝えることに情熱を注ぐアーティストです。
大阪・関西万博2025では、リベリア館のスタッフとして来場者を迎え、国の魅力だけでなく、人々の温かさや開かれた心を伝えていました。

万博も終わり、現在は帰国したシディキさんが、自身の朝の時間を分かち合ってくれました。
それでは、彼の朝ごはんを見てみましょう。
一日の力強いスタート:リベリアのドライライス(ラフィリ)

今回紹介するのは、リベリアで朝食や昼食として親しまれている料理「ドライライス(ラフィリ)」。
まずオクラをやわらかくなるまでゆで、別のなべで玉ねぎ、とうがらし、トマトを油でいため、さらにイワシを加えてコクのあるソースを作ります。そこにオクラを混ぜ合わせ、最後にごはんと合わせます。
少し粘りけがありながらもしっかりとした食べごたえ。そこにフライにしたスナッパー(熱帯の海の魚)、ソーセージ、ゆで卵を添えるのが定番です。
シンプルで満足感があり、体に力がみなぎる一皿。まさに一日のスタートにぴったりの食事です。
それでは、その作り方を見てみましょう。
1 玉ねぎや青とうがらし、イワシなどを刻む。

2 フライパンでいため合わせ、水分をとばしながら煮つめる。

3 魚とソーセージは油で揚げる。

4 大きめの皿にドライライスを盛り、ソーセージ、スナッパー、ゆで卵を添えて完成!

「『ドライ』というわりにはあまりパサパサしていないけど、なぜですか?」——シディキさんにたずねてみると、以下のような興味深い説明がありました。
「ドライライス」は、リベリアの食文化の中で特別な位置を占めており、日常的な朝食であると同時に、土曜日の伝統的な食事でもあります。
朝食としては、多くのリベリアの人々の実用的な生活スタイルを反映しています。食事は、長時間の労働を支えるエネルギーをしっかりと補給できるかどうかが重視されます。朝食とそれ以外の食事を厳密に分けるというよりも、「手に入りやすく、満腹感があるもの」を食べる傾向があり、ドライライスは、前日の残りを温め直して食べることも含めて、手軽で栄養価の高い選択肢となっています。
また、土曜日との結びつきは、長年の家庭の習慣に由来しています。一週間、手間のかかるスープや煮込み料理を作り続けると、家庭ではよりシンプルで、調理時間や材料も少なくてすむ「ひとなべ料理」を好むようになります。こうした実践がしだいに文化として定着し、ドライライスは週末の始まりにおける「くつろぎ」や「休息」、そして「家族の時間」を象徴する存在となりました。
「ドライライス」という名前自体も、パサパサした食感ではなく、対比から生まれたものです。というのも、一般的な「ライス&スープ」(ごはんと煮込み料理を別々に提供するスタイル)とは異なり、ドライライスは具材といっしょに調理され、別添えのソースなしで食べられます。そのため相対的にスープといっしょではない「ドライ(乾いた)」と表現されているだけで、実際には風味豊かでしっとりとした料理なのです。
リベリアと日本のつながり
一見遠く離れているように見えるリベリアと日本ですが、じつはさまざまなつながりがあります。
日本は2007年以降、インフラ、保健、教育などの分野でリベリアを支援してきました。首都モンロビアには「ジャパン・フリーウェイ」や「日・リベリア友好母子病院」など、日本の名を冠した施設もあります。
またリベリアは、船舶の登録国(便宜置籍国)として日本でもよく知られています。
文化面でも興味深い共通点があります。
リベリアには「ギオ・デビル」という存在があり、祭りの中で踊るように現われて、行儀の悪い子どもたちを戒めます。これは日本のなまはげにどこか似ています。


さらに、リベリアの子どもたちは、日本の「アルプス一万尺」に似た手遊びも楽しんでいます。
そして食。
リベリアでは一人あたり年間120kg以上の米を消費しており、日本の約2倍。米は両国において日常生活の核となる存在です。
異なる文化でありながら、どこか共通するものがある——そんな不思議な近さを感じます。
初対面の距離を縮めたリベリア独特のあいさつ「指パッチン」
シディキさんとの出会いは、大阪・関西万博2025での忘れられない思い出の一つです。
私はできるだけ多くの人に会おうと、パビリオンを巡っていました(以前の記事「大阪・関西万博編」参照)。 そこで出会った彼は、初対面とは思えないほど温かく迎えてくれました。
気づけば、自然と会話が弾んでいました。
距離を一気に縮めたのは、言葉ではなく「あいさつ」。
リズムを変えながら繰り返すユニークな握手、最後は指パッチンでしめくくる——その瞬間、日本とリベリアの距離は消えました。
日本についてどう感じたかをたずねると、彼はこう語ってくれました。
「万博では、日本で初めてアフリカの人と話したという人に出会うことがありました。テレビでは見るけれど、実際に会う機会は少ないそうです。日本はとてもよい国に見えます。人も親切で、安全な環境があります。少し気になるのが、シャイな人も多いことと、異文化に触れる機会が比較的少ないこと。ぜひ積極的に異なる文化に触れることで、もっと多くの世界や人と出会い、交流を楽しめるのではと思います。そして、西アフリカにも来て、われわれのバイブス(雰囲気)を味わってほしいです。」
その言葉は、私の中に残り続けています。
シディキさんの素晴らしいところは、どんな質問にもためらいや遅れなく答えてくれるところです。そして再び、会話の中心には「食」がありました。
彼は、リベリアの食はベストフードであると、誇らしげに話してくれました。食べたことないものが多く、現地で味わってみたいという思いが強くなりました。また一つ、行きたい場所・食べたいものが増えました。
食、あいさつ、遊び——これらは小さな入り口です。
しかし、それは理解や共感、つながりへの扉を開くことができます。
シディキさんと筆者の万博での交流の様子はこちら(Instagramのリール動画)


次はどんな朝ごはんと、どんな物語に出会えるでしょうか?
次回の「世界の朝ごはんストーリー」もお楽しみに。