スリランカ「世界の朝ごはんめぐり」Webマガ版2025年7月号

遠く離れているように見える日本とスリランカですが、じつはこんな共通点があります。

  • 自然との共生:四季や気候とともに生きる暮らし方。
  • 仏教がおもな宗教の1つ:両国ともに仏教を精神文化の中心に据えてきた歴史があります。
  • おもてなしの心:食を通じて人と人がつながる文化。
  • カレーとお米文化:スパイスやだしで深い味わいをたいせつにする点(スリランカのカレーの方が日本よりも辛めです)と、主食がお米である米文化が深く根付いています。
  • 際協力:JICAなどを通じて教育や農業支援の歴史もあります。
  • お茶文化:お茶を水分としてただ飲むのではなく、人と人とのつながりや精神的なおちつきをたいせつにする時間として扱います。

味わい豊かなセイロンティー(ミルクティー)

あるとき、私は国際NGOのコンサルタントとして、スリランカ教育省のワークショップを担当することになりました。従来の国語や算数などの教科に特化した教育ではなく、自己認識、コミュニケーションや立ち上がる力、共感力などの「非認知スキル」(Social and Emotional Leaning 社会性と情動の学習)を教育政策に落とし込むプロセスで、教育省の要人・関係者に対してワークショップを行なう必要性があったからです。新たなものを政策に組み込むという挑戦的なテーマでしたが、そこで頼りになる存在だったのが、現地で調整役を担当していたスヴィさんでした。

外国人である私と教育省からの参加者との双方に気配りするスヴィさんの仕事ぶりはプロフェッショナルであり、私にとって、とてもありがたいものでした。

その休憩時間、私が彼女に「私は世界の食文化に興味があり、いろいろな人に世界のおいしさを伝えたい」と立ち話をすると、「よかったら今晩、うちでスリランカ料理を作るのでいっしょに食べませんか?」とスヴィさん。その一言で、心がほぐれたのを覚えています。

素敵なパートナー(新婚相手)といっしょに温かく迎えてくれて、そこで私は「スパイスがきいたチキン」や「彩り豊かなスイーツ」と出合いました。

「スリランカ料理は多種多様。いろんな材料を使っていろんな味を創造し、いろんな人といっしょに食べることでつながりができる。スリランカ料理で朝が始まると、それだけで気持ちが穏やかになるんです」――そんなスヴィさんのコメントが、今回のインタビューの中でも特に印象に残りました。

スリランカの魅力を端的に表現するなら、新鮮な食材やスパイスの豊かさ、そして笑顔で分かち合う、思いやりに満ちた人々の温かさなのかもしれません。もっとこの場所でこの人たちといっしょにいたい、そう思わせてくれる、そんな素敵な出会いに感謝しています。

次回はどの国の朝ごはんが登場するのか、どうぞお楽しみに!

 

【筆者プロフィール】岡本啓史(おかもと・ひろし)●国際教育家、生涯学習者、パフォーマー。これまで国連やJICA等で5大陸・45カ国の教育支援を実施。ダンサー、役者、料理人、教師の経歴も持つ。学びに関するブログを5言語で執筆し、ライフスキル教育、講演活動、グローバル学び舎3L-ミエル運営など、日本内外で国際理解・幅広い学びやウェルビーイングの促進に注力中。著書『なりたい自分との出会い方:世界に飛び出したボクが伝えたいこと』(岩波書店)『せかいのあいさつ』全3巻(童心社)監修。サイト/SNS:https://linktr.ee/mdhiro

栄養と料理2025年7月号